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イギリスの図書館離れ対策

春の雪と寒さ、イギリス鉄道会社の定時運行状況、日本と比べた「遅れ」の定義の甘さ、図書館離れを食い止めるための戦略、過去のエイプリル・フールでテレビや新聞がついた嘘について。

先週末から各地で雪が降りまして、イングランド中部では10cmも積もるような所がありました。春は霙(みぞれ)が降ったり、風が強くなったりというようなことはありますが、ここ14、15年は積もるほどの雪というのはなかったです。大昔は時々この時季に雪が降ることがあったそうですが、ここ十数年としては異常に寒く雪の降る天気ですね。

アンカー宮川泰夫さん:春はだいぶやってきているんですか。

桜もソメイヨシノは今咲いています。それから、木蓮はだいぶ蕾(つぼみ)が大きくなっています。

アンカー:じゃあ、日本とほぼ同じような感じ。

そうですね。宮川さんは電車に乗っていて、どれくらい途中で止まったり、遅れたりするとイライラしたり、アレ?っと思ったりしますか。

アンカー:朝の本当に忙しい時なら2、3分遅れたら、ちょっとイライラしますよ。

ああ、イギリスでの生活はだめですね(笑)。こちらでは本当に日常茶飯事に電車や地下鉄が遅れますので、15分から20分の余裕は必要ですね。時間が遅れるというのは当然通勤時間にも起きますので、会社に遅刻するということもよくあります。この経済的なマイナスの影響は、イギリスでは一年間でおよそ20億円に達しているだろうと試算されています。遅れの原因で多いのは、線路の信号故障や車両不良なので、結局設備が古いため、それを新しくしない限りこの問題は解消しないんです。

鉄道会社の監視機関であります鉄道規制局(Office of Rail Regulation)というところが、なんとか時間を定刻にしようということで、各路線の運営状況を調査してその業績を公表しているんです。その調査報告によりますと、去年の鉄道の運航で最終駅に定刻で到着した電車は、およそ9割というふうに言っているんです。日本の感覚で言いますと、9割というのは決して良くないんでしょうけれど、こちらの感覚では「あれ、そんなに改善されたのかしら?」と思ってしまいます。

ところが、騙されてはいけません。鉄道規制局では長距離電車の場合は10分まで、通勤電車の場合は5分までの遅れは遅れじゃない、定刻に到着したと定義しています。

アンカー:そりゃ、かなり甘いなあ(笑)

ですよね(笑)。でも、全然そうは思っていませんで、これでかなり良いんじゃないかというふうに言っていますね。

イングランドの南西部を走っているある鉄道会社は、先月定刻に到着した率は93.5%と、大変に優秀な成績ですが、中身を見てみますと本当に定刻で到着したのは、つまり10分遅れじゃないのは7割しかなかったんですね。ですから、やはり甘いですね。この記事では日本の事情も紹介しています。東京大阪間350kmの距離を走る東海道新幹線の去年の遅れの平均は18秒だそうです。だいぶ桁が違いますよね(笑)。政府は2014年までに、この定刻の到着率を92%まで上げるということを目標に掲げています。でも2012年にはロンドンでオリンピックが開催されるんですけれども、なぜこの2012年を目標にしないで2014年にするのか。やはり甘いですね。

アンカー:あの、まあ黒川さんは日本の方ですから、先ほどからかなり言葉の後ろに怒りがこもっていますけれども、イギリスの生まれ育ちのイギリス人の方は、あまりそれで困らないんですか。

やはり困りますよね。でも皆が遅れるので会議の時間に遅れたりしても、もの凄く申しわけない、というふうには言わなくてすみます。「電車が遅れた」と言えば、「ああ、しょうがないな」と。ただ、イライラしている人はいますよね。ですからそういうイライラが積もり積もって、社会全体が何となく怒りのムードになるということは、少しずつあるように思います。

アンカー:そうですよね。それと、最初にありましたように経済的な損失も大きいわけですよね。さて、どれくらいまで改善されますか。2014年ですか、またデータを見てみたいものですね(笑)。次は図書館に関する話題ですね。

今年イギリスは全国読書年ということで、図書館が中心になって学校の児童や家族を中心としたイベントを催しています。例えば各月でテーマを決めまして、5月は心と体についての本を読んで学びましょうとか、7月は韻を踏んだ詩の楽しさを知ろうとか、11月は皆で声を出して読みましょうとか、そのようなことをやっています。こうした企画を行なっている図書館なんですが、こちらでも子供たちの本離れが進みインターネットが普及したことによって、ここ数年図書館の利用が非常に少なくなりまして閉鎖する所も出てきています。

こういう利用の減少を食い止めようということで、イメージ・チェンジ戦略の図書館もあります。私が住んでいます街の図書館も、先日行ってみましたら、すっかり変わっていました。それまでの読書コーナーというのは、会議室用の大きな机が何台かありまして、その周りにパイプ椅子が置かれているという感じだったんです。それが革張りのソファがどーんと置かれまして、真ん中にテーブルがあるんですが、ゆっくりと腰掛けながらおしゃべりをしている人や、本を読んでいる人がいました。それから、書棚の周辺にも以前よりもっと椅子が増えて、本を探すのに腰掛けながら中身を読めるようになっていました。それから、これは数ヶ月前からあったのですが、喫茶コーナーもあります。これは本が並んでいる同じフロア(floor)にあるんです。買い物の途中にちょっと立ち寄って、コーヒーとケーキで一休みというようなことも出来るようになっています。

政府も図書館離れ対策というのを考えていまして、貸し出しの手続きをインターネットで行なって、本を宅配するサービスはどうかとか、本を借りるとその度にポイントを稼げることになっていて、そのポイントがいくつか溜まると、無料でコーヒーが飲めるというような券を発行しようとか、そういうことも言われています。

アンカー:ふーん。

イギリスでは小学校に入る4、5歳児から、学校では毎日読書の時間というのがありまして、各児童の読書の能力によって、レベル別の本が各自に与えられまして、非常に読書に力が入れられています。

それから、電車の中でも物凄い分厚い物語の本を抱えて読んでいる人の姿は、今でもよくありますね。読んだ本の感想を発表する読書会というのもよくあります。マンガ文化、コミック文化が非常に発達している日本に比べますと、イギリスの読書の習慣はまだまだ残っていますので、この財産を守ろうということで、図書館の奮闘振りを支持している人も多いようです。

アンカー:なるほど。さて、やがて4月1日が参ります。いわゆるエイプリル・フールですね。

ちょっと早いんですが、先取りして過去のとんでもない嘘をちょっとお伝えしたいと思います。1976年にBBCがついた嘘です。

アンカー:BBCって公共放送じゃないですか。

ええ。もうBBCはエイプリル・フールを大率先して毎年嘘をつきます(笑)

当時の科学番組がありまして、これを司会するのは有名な科学者で非常に人気のある人なんですが、こんなことを放送中に言いました。

「今日9時47分に大変稀な天文現象が起きます。木星の後ろに冥王星が来るんですが、その時に重力の整列が起きるために、地球でも重力に変化が生じます。9時47分にジャンプして飛び上がると、一瞬体が浮くような不思議な感覚になります」

と言いました。そして、9時47分が過ぎてBBCに電話が殺到しました。多くは「浮いた!浮いた!」という喜びの電話でした。中には「体がすっかり宙に浮いて、部屋をグルグル浮いたまま回った」と言う女性もいたそうです。それから1991年タイムズ紙は、当時渋滞が少し問題になってきたロンドンの環状線高速道路について、こう伝えました。

「渋滞の解消策として、6車線全部を一方通行とすることとなった。月曜日、水曜日、金曜日は時計回り方向に。火曜日と木曜日は時計と反対回りの一方通行とする。週末はこれまで通り3車線ずつ」

という記事を伝えまして、新しい通行法の運営などに関しても非常に詳細に伝えました。

記事を読んだ読者からは反対意見や投書、電話などが届いたんですが、その中の一人は「いつも買い物に行くのにこの道路を利用しているんだけれども、これまで3kmのドライブで行けた所が、曜日によっては、ぐるっと遠回りをしなければならないので、180kmもドライブをしなければならず、非常に不便なので絶対に反対だ」と反論したそうです。

アンカー:しかし、それは真に受けて一方通行を逆走したら、危ない話ですよねえ。公共のというか、新聞やラジオが平然とやるんですね。

そうですね。一瞬どれが嘘で、どれが本当か判らないような記事が結構あります。翌日になって発表されて、ああなるほどという感じです。

アンカー:実はあれはエイプリル・フールでしたと。私の周辺、日本では最近あまりエイプリル・フールを楽しまないというか、やらない感じがするんですよ。それで私つらつら思うにですね、現実がエイプリルフールを飛び越しちゃってるんですよ。もう、現実の嘘の方が大きいんです。日本はね、そういう困った事件がたくさんありましてね、この大嘘つきというのが、実際の事件になっちゃってるんですよね。

ああ、それもちょっと悲しいといいますか、心配なことですね。エイプリル・フールを楽しめるぐらいが、幸せということでしょうかね。
27日放送イギリス・ロンドンから黒川育子さんのレポート

  • イギリスは時間に厳しいのかと思っていたら、電車の時間は結構適当のようですね。アガサ・クリスティーの推理小説で、決まった時間に列車が並走するという話がありますが、現実にはあり得ないことなんでしょうね。(編者)
  • 日本にも高齢者や障害者だけでなく、地域によっては誰でも利用できる宅配図書サービスがありますし、カフェもごく一部にはあるようです。飲食禁止、おしゃべり禁止の静かな図書館ではちょっとつまらないです。(編者)

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