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クリケット文化の地球化

地球温暖化とコアラやペンギンへの影響、インドで発足したクリケットのプロリーグでオーストラリア人選手が活躍していること、先住民の狩猟により乱獲が起きている恐れがあることについて。

アンカー松本一路さん:オーストラリア、メルボルンから杉本良夫さんです。杉本さん、こんばんわ。

こんばんわ。よろしくお願いします。

アンカー:そちらはもう秋でしょうか。

ええ。すっかり街は秋の装いでして、街路樹が色づいて、赤や黄色の葉っぱが目にまぶしいシーズンになりました。

どうも、温暖化がオーストラリアの動物にも影響を及ぼし始めているようです。

空中に発散される二酸化炭素の量が増えてきたために、コアラの食べ物であるユーカリの葉っぱの中の栄養分が減る傾向にあるということが、シドニー大学の調査で解ったんです。

この傾向が続きますと、コアラの生態系は崩れるかも知れないという、やや物騒な予測が出ています。

アンカー:ほう。

それから、ペンギンにも変化が現れているようです。

メルボルンから南東に2時間ぐらいドライブしますと、フィリップ島(Phillip Island)という島があるんです。

この場所には、夕暮れになりますとペンギンが群れを成して海の中から現れてきまして、海岸をよちよち歩くので、観光名所として知られているんです。

そのペンギンたちが、ここ数年性的に高ぶっていて、オスとメスが仲良くなり始める時期が、以前よりずっと早くなり始めているという新聞記事が出ていました。

アンカー:動物界にも温暖化の影響が、じわじわと来ているわけですね。

オーストラリアにいる珍しい動物にも、いろんな影響が出てきているようですね。

さて、今晩はまずクリケットの話からしましょう。

アンカー:スポーツの?

そうですね。

オーストラリアの人気スポーツの一つはクリケットですが、これはもともとイギリスで発祥して、野球の原型だというふうにもいわれています。

競技人口がサッカーに次いで、世界で2番目に多いスポーツだということで、世界大会などでは、ここ10年ばかりオーストラリアが圧倒的に強いので、オーストラリア国内での人気も高まる一方なんです。

ところが、今年になってインドで、クリケットのプレミアリーグ(最上級リーグ)というプロリーグが発足したんです。

インドの実業界とか、映画界とかのお金持ちがチームの所有者となって、大金をかけて世界の有力なクリケット選手を引き抜き始めているんですね。

アンカー:ほう。

インドでもクリケットは国技に近い、大変人気のあるスポーツですから、これで商業的な成功を目論んでいるんだといわれていますが、オーストラリアは世界的に有名なクリケット・プレーヤーの宝庫なので、この4月から始まったインドのリーグ戦には、彼らの名前がかなり並んでいます。

深夜の時間帯なんですが、インドからのテレビの実況中継もありまして、これまで9試合のうち5試合で、オーストラリアの選手が最優秀選手に選ばれているようです。

インドは中国と並んで急成長を遂げているわけですが、その波が世界のスポーツ地図をも塗り替えそうな勢いなんですね。

アンカー:へえ。

クリケットは16世紀ごろに、イギリスに起源をもつといわれているスポーツで、主にかつての大英帝国の植民地に広がったわけですね。

オーストラリア、インド、ニュージーランド、パキスタン、バングラデシュ、西インド諸島、南アフリカといった所で圧倒的な人気を持っていまして、国際クリケット連盟には100ヶ国以上が参加しているんだそうです。

アンカー:ほう。

野球と似ている点もありますけれども、アメリカから世界に広がった野球は日本、韓国、台湾、カナダ、中米などに限られています。

地球的視野で見ますと、クリケットの競技人口のほうが、ずっと多いといわれているんですが、これにはもちろん人口10億を超えるインドの貢献度が大変大きいわけですね。

クリケットのルールというのは、数分では説明できないほど大変複雑なものなんですが、出場選手は各チーム11人です。

アンカー:これはサッカーと同じですね。

そうですね。

そして、ボウラーという野球だとピッチャーに当たる人が、バッツマンというバッターに対して投球をするんです。バッツマンの後ろにあるウィケットという3本の棒の上に置かれた、ベイルといわれる横棒が落ちるとアウトになるんですね。

まあ、なかなか落ちないんですが。

このウィケットに投球が当たらないようにしながら、バッツマンは右に左に打ち分けるわけなんです。

なかなかアウトになりませんので、テスト・マッチ(Test match)といわれるクリケットの国際試合は全部で2イニングなんですが、その2イニングを終わるのに4、5日かかるのが普通なんですね(笑)

とにかく、正式の試合はとても長くて、選手が昼食やお茶の時間に休憩したりして、試合が中断するわけです。

最近では、ゲームが1日で終わるワンデー・クリケット(One-day cricket)といわれるやり方も人気が出てきましたし、インドで始まったプレミアリーグのほうは、テレビ中継を見込んで、だいたい3時間ぐらいで試合が終わるトウェンティ・トウェンティ(Twenty20)といわれる新しいルールを導入しているようです。

アンカー:ああ。いかにも長い競技時間というから、イギリスに始まったというのが分るんですが、ルールも変わりつつあるわけですね。

そうですね。だいぶバラエティが出てきたようですね。

アンカー:ああ、なるほど。

それから、クリケットは夏のスポーツで、オーストラリアでは夏には週末になりますと、地域の愛好家が上から下まで真っ白なユニホームで草野球ならぬ、草クリケットを楽しむ姿があちこちで見られるんですね。

これから北半球では夏に向かっていくのと反対に、南半球では冬になりますので、これまでオーストラリアや南アフリカの選手たちは、インド・リーグができる前は北半球での国際試合を戦ってきたのですけれども、これからは北半球の夏はインド・リーグで、南半球の夏は自国でというような暮らし向きが定着してくる選手も、かなり出てくるかも知れませんね。

いずれにしましても、クリケットの新しい波がインド洋の向こうにあるインドから、日本へ向けて押し寄せて来るような感じですね。技術や人が国境を越える、いわゆる文化の地球化の一環なのかも知れませんね。

さて話は変わりますが、先住民文化について、ちょっとした論争が起こっていますので、それについて簡単に触れておきましょう。

アボリジニという先住民の人々の間では、何世紀にも渡って、自然生物を槍などで捕獲する習慣が続いてきたのです。

アンカー:ブーメランもそうですよね。

そうですよね。遠くへ投げて空を飛んでいる鳥などを打ち落とすわけですよね。

ところが、最近ある種の生物については、ちょっと乱獲気味ではないかという問題が起こっているんですね。

例えば、オーストラリア大陸の北東部に住む先住民集団の間では、鴨の数が激減してきているんだそうです。

10年や15年前と比べると、何十分の一になっておりまして、そのことを先住民の長老たち自身が心配し始めるようになったんだそうです。

かつては、手製の道具で狩りが行われていたんですけれども、最近では鉄砲で打ち落とすようになったりしますので、能率が上がる一方で、必要以上に狩猟をするようになったからだといわれていますね。

オーストラリアの北東部にあるトレス海峡(Torres Strait)の島々や大陸の沿岸に住む先住民の人たちにとって、ジュゴンとよばれる水棲動物が、、、

アンカー:クジラのように見えるんですよね。

ああ、そうですね。クジラよりはかなり小さいですが。水の中に棲んでいて、体長が2m半から4mぐらいで、平均すれば3mぐらいの哺乳動物なんですね。

アボリジニの人たちが捕獲を続けた結果、その数が減り続けているといわれています。

この地域のウミガメも、同じような運命にさらされているといわれているんですね。

ところが、先住民コミュニティーの中には、ジュゴンやウミガメの捕獲そのものが、10代の成人儀式となっているところもかなりありまして、大きな文化的な意味を持っているわけですね。

けれども他方では、オーストラリアの環境運動は日本の捕鯨活動を非難しながら、先住民が海の中の大きい哺乳動物であるジュゴンを捕り続けていることに目をつぶっているんじゃないかという、日本側からの批判もあるんですね。これに対しては、最新の技術と巨大な船を使った捕獲と、昔ながらの方法で行われている4000年来の慣習とは、全く次元が異なるという反論もあるんです。

それでも、先住民による採取がこのまま進みますと、長期間持続可能な狩猟ができなくなってしまうというアボリジニ・コミュニティーの中の反省もあるようです。

こういう大昔から続けられてきた狩猟の慣習というのは、尊重されるべき伝統文化であるのか、それとも、環境破壊をもたらす危険な要素を含んだ行為なのか、環境運動の中には先住民に対して負い目を持つ人たちも多くて、なかなか込み入った議論が続いているようです。

アンカー:なかなか難しい問題なのかも知れませんね。

ええ。伝統文化対環境破壊という、やや複雑な議論がアボリジニ社会を巡って続けられているということです。

アンカー:はい。ありがとうございました。

どうも失礼しました。ご免ください。
9日放送オーストラリア・メルボルンから杉本良夫さんのレポート



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